平成25年度 数理学談話会

数理学談話会について

講演記録(敬称略、時系列逆順)


3月7日(金)

松村 昭孝 氏 (大阪大学大学院情報科学研究科)

Asymptotic behavior toward a multi-wave pattern for the scalar viscous conservation law

アブストラクト: In this talk, we show our recent works with Natusmi Yoshida on the asymptotic behavior of solutions to the Cauchy problems for the scalar viscous conservation law, where the far field states are prescribed. In particular, we treat the cases where the flux function is convex but linearly degenerate on some interval, and the corresponding Riemann solution consists of a contact discontinuity and rarefaction waves. As for the viscosity term, we treat the cases with either a standard linear viscosity or a nonlinearly degenerate viscosity term (p-Laplacian type viscosity (p>1)). Then, for the standard linear viscosity (resp. the nonlinearly degenerate viscosity), the solution of the viscous conservation law is shown to asymptotically tend toward a multi-wave pattern consisting of the rarefaction waves and a corresponding viscous contact wave which is constructed by an integration of the linear heat kernel (resp. the Barenblatt solution of the porous medium equation).


2月14日(金)

杉山 健一 氏 (千葉大学大学院理学研究科)

分割数と保型形式

アブストラクト: ラマヌジャンは整数の分割の母関数について様々な研究を行った.その性質の多くは,その母関数の保型性から説明されるが,幾つかは古典的な保型形式とはならない.この講演では,具体例を交えながらこの事実を解説する.また,時間に余裕があれば,いわゆる「保型形式の持ち上げ」についても解説したい.


1月29日

伊吹山 知義 氏 (大阪大学大学院理学研究科・名誉教授)

2次整環の L 関数, 2次形式の合成と種の理論, および跡公式

アブストラクト:  ジーゲル保型形式の跡公式への応用のために, 2元2次形式の合成(2次体の極大でない一般の整環のイデアルの積)と種の理論について詳しく復習し, 再構成する必要が生じた。これには Gauss, Dirichlet, Dedekind, Weber, Siegel, Cassels, Hirzebruch, Hammond などの文献が絡んでいる。(Takagiにも少し解説がある。)今回は, なるべく専門的な内容に立ち入ることなく, この日本では意外にもあまり知られていない古典的な理論に, さらに多少付け足すことがあること, またその結果で跡公式の一部の寄与を完全に明示的に記述できることを歴史的な概説とともに話したい。


1月17日(金)

松崎 克彦 氏 (早稲田大学教育学部)

一般化された写像類群とタイヒミュラー空間
(ニールセン実現問題から円周の微分同相写像群の固定点問題へ)

アブストラクト: 閉曲面の写像類群はタイヒミュラー空間に自己同型群として作用する. ニールセン実現問題は,写像類群の有限部分群がタイヒミュラー空間に固定点を もつことを示すことより従う.タイヒミュラー空間および写像類群の概念を 一般化(無限次元化)することにより,同様の枠組みで種々の問題を設定することができる. この講演では,そのうちのいくつかの結果を紹介する.


12月4日

白井 朋之 氏 (九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)

ランダム行列に関連する二つの話題 -- 携帯ネットワークと航空機搭乗問題


11月27日

辻井 正人 氏 (九州大学数理学研究院)

負曲率多様体の測地流と半古典ゼータ関数

アブストラクト: 測地流はリーマン多様体上の自由粒子の運動を表す流れ(力学系)であり,多様体の断面曲率が負であるときには典型的にカオス的な挙動を示すことが知られている.力学系の相空間上の関数への作用を転送作用素と呼ぶが,負曲率多様体上の測地流の場合,適切な関数空間を考える事で転送作用素のなす1パラメータ半群の生成作用素が離散スペクトルを持つ事が知られている.その離散スペクトルは本質的には関数空間の取り方によらず,リーマン多様体のみによって定まる.多様体のラプラス作用素のスペクトルを量子力学的スペクトルと呼ぶとするならば,これらは古典力学的スペクトルとでも言うべきものである.本講演ではこれらの離散スペクトル(固有値)が虚軸に平行な「帯状構造」を持つという結果を紹介したい(F. Faure氏との共同研究).また,それをもとに半古典(Gutzwiller-Voros)ゼータ関数の零点について得られた結果や関連する問題についても議論したい.


11月20日

坂上 貴之 氏 (京都大学大学院理学研究科)

乱流理論におけるオイラー方程式の散逸的弱解と点渦衝突

アブストラクト: オイラー方程式の滑らかな解はその運動エネルギーを保存するが,充分な滑らかさがないときにはエネルギーが散逸することがあり,そのような(弱)解を「散逸的弱解」と呼ぶ.近年,このクラスに入っているオイラー方程式の弱解が3次元一様等方乱流の統計則に関するコルモゴロフ理論に関係して重要な解のクラスであるとの指摘がなされているが,そのような解の存在だけでなく,どのような物理的なプロセスでエネルギーを特異散逸するかなど未知の部分が多い.
   本講演では,このオイラー方程式の散逸的弱解と乱流理論の関係の研究の現状について概観した後,オイラー方程式の特異解による保存量の散逸の流体運動としてのメカニズムを明らかにするため,1つのモデルとして2次元オイラー方程式における点渦力学を取り上げる.
   2次元乱流では3次元乱流におけるエネルギーに対応する役割を果たす保存量は,渦度のL2ノルムであるエンストロフィーであるとされている.そこで,我々は2次元オイラー方程式の滑らかでない解でエンストロフィーを散逸するような解について,2次元点渦力学系を通じて考え,3点渦が有限時間で自己相似的に衝突することがエンストロフィーの特異散逸を引き起こすメカニズムの一つであることを示す.
   なお,講演の前半は明治大学の名和範人教授および京都大学の松本剛助教との共同研究である.


10月30日

近藤 剛史 氏 (東北大学大学院理学研究科)

Gromov の Wirtinger space と非線形スペクトルギャップ

アブストラクト: 有限グラフに対する組合せラプラシアンのスペクトルギャップの非線形の類似物として, 距離空間をターゲットとする非線形スペクトルギャップを定義する事ができ, この量が幾何学的群論, 距離空間の幾何学等の様々な場面で現われることが分かって来ている. この講演では主にその評価の方法と Gromov が導入した Wirtinger space について述べる.


10月23日

Norbert Pozar 氏 (金沢大学理工研究域数物科学系)

Motion by crystalline mean curvature: Viscosity approach

アブストラクト: The motion by anisotropic crystalline mean curvature has attracted significant attention due to its importance in modeling of crystal growth. However, crystalline mean curvature is a nonlocal, possibly discontinuous quantity on the crystal facets. This leads to facet breaking and bending and causes significant difficulties to the analysis of the evolution. In particular, there is no general existence theory for such problems. In this talk, I will introduce the notion of crystalline mean curvature and briefly discuss a recent well-posedness result for a total variation flow of non-divergence form, which includes the motion of graphs by crystalline mean curvature. This talk is based on joint work with Mi-Ho Giga and Yoshikazu Giga.


10月9日

田辺 正晴 氏 (東京工業大学大学院理工学研究科)

組み合わせ論的 Hodge star 作用素に関するいくつかの注意

アブストラクト: 近年 S.O. Wilson は,三角形分割された向き付け可能な閉リーマン多様体の,内積付のコチェインの空間に組み合わせ論的 Hodge star 作用素を定義し, コチェインの空間上の内積がある内積(Whitney 内積と呼ばれる)の場合には,三角形分割を細かくして行くと,組み合わせ論的 Hodge star 作用素は,通常のHodge star 作用素に収束することを示した.この講演では,組み合わせ論的 Hodge star 作用素の自乗は,コチェインの空間上の内積がWhitney 内積である場合には,三角形分割を細かくして行くと,恒等写像または恒等写像の-1倍に収束することを見る.また,Wilson が組み合わせ論的 Hodge star 作用素を使って与えた,正則1-コチェインの定義に関して,ある注意を与える.


6月5日

角 大輝 (大阪大学大学院理学研究科)

ランダム複素力学系におけるランダム性誘起現象

アブストラクト: 本講演ではリーマン球面上の多項式写像の族によるランダム複素力学系を考える.一般に,リーマン球面上の次数2次以上の有理写像 f を一つとり,その反復合成によるリーマン球面上での力学系を考えると,f の「ジュリア集合」と呼ばれる,非可算個の点を含むリーマン球面の空でないコンパクト部分集合が存在して,f のジュリア集合上では f の力学系は「カオス的」であり,かつリアプノフ指数が正となる初期点の集合のハウスドルフ次元が正であることが知られている.これに対して,(独立同分布)ランダム複素多項式力学系を考えると,ほとんど全てのシステムに対して,通常の複素力学系と全く異なった次の状況(1)(2)がともに起こることを示す:
(1)リーマン球面上の全ての初期点に対して,そのディラック測度の推移作用素随伴による軌道を考えると,リーマン球面上の周期的な確率測度のサイクルに近づく.
(2)リーマン球面上の高々可算個の初期点をのぞく全ての初期点に対して,ほとんど全ての写像列に対するリアプノフ指数は負である.
よってランダム複素力学系には,ランダム性が引き起こす特有の現象がある.

参考文献:
[1]H. Sumi, Random complex dynamics and semigroups of holomorphic maps, Proc. London. Math. Soc. (2011), 102 (1), 50--112.
[2]H. Sumi, Cooperation principle, stability and bifurcation in random complex dynamics, preprint, http://arxiv.org/abs/1008.3995.


5月22日

穴井 宏和 (富士通研究所/九州大学)

Quantifier Eliminationのアルゴリズムとその応用


5月15日

川上 裕 (山口大学大学院理工学研究科)

Willmore予想とその解決法について

アブストラクト:  2012年は3次元球面内の曲面論の研究が大きく進展した年でした.特に重要なものとして,MarquesとNevesによるWillmore予想の解決が挙げられます.本講演では,Willmore予想とは何かを説明し,その解決の証明の概略を紹介したいと思います.


5月8日

金銅 誠之 (名古屋大学大学院多元数理科学研究科)

K3 曲面のモジュライと保型形式


4月24日

木村 正人 (金沢大学・数物科学系)

変分構造を保存する多角形版移動境界問題

アブストラクト:  表面張力や移流などの効果によって起きる界面の時間変化を表す様々な数理モデル・移動境界問題が提案され研究が行われているが,その数値シミュレーション手法についてはまだ完全に確立されたと言える状況ではない.今回は,多くの場合の制約となっている曲率項や面積保存性の自然な取り扱いを可能にする手法として,多角形版の移動境界問題を提案する.重要な移動境界問題のいくつかについてその多角形版の問題が自然に導かれる.これはもとの問題の半離散化近似として興味深いだけではなく,もとの問題の類似としてそれ自身が興味ある研究対象である.講演では,曲率流や表面張力項を持つHele-Shaw問題など,いくつかの多角形版の移動境界問題とその性質について紹介し,更に面積速度保存性を持つ2次精度の陰的時間離散化について結果を報告する.
 本研究は矢崎成俊氏(明治大学),田上大助氏(九州大学),M.Benes氏(チェコ工科大学)との共同研究である.


4月17日

大塚 浩史(金沢大学・数物科学系)

2次元ゲルファント問題における爆発解析と点渦系のハミルトニアン

アブストラクト:  2次元のゲルファント問題とは,非線形項が指数関数で表される半線形楕円型境界値問題であるが,平衡点渦系の平均場極限において現れることが知られている。爆発解析とは,解の発散列(爆発列)の極限の分類のことであるが,爆発列に対する爆発点の位置が,点渦系のハミルトニアンの臨界点として特徴付けられることはよく知られている。本講演では,爆発列における爆発に十分近づいた解について,そのモース指数も点渦系のハミルトニアンに関連して評価されることを紹介する。
 本講演の内容は,F.Gladiali氏(Sassari大),M.Grossi氏(ローマ大),鈴木貴氏(大阪大)との共同研究に基づく。



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